雨の分水嶺。
ある程度の雨は想定してたけど、やまない雨。
7月なのに、極寒。
我慢と修行の2日目。
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将監小屋~雁坂小屋
将監小屋をスタートしたのは23時30分ごろ。
結局相方は約1時間遅れで20時過ぎに小屋にやってきた。
調子悪い…?
眠すぎてぐねった、とのことだったけど、明らかに遅い。笑
3時間の仮眠を含めた休憩ということにしたけど
3時間の仮眠と勘違いしたらしく、安定のもたもた・・・
23時には出たかったけど、40分ほどロスしました。
夜間なので写真がないのですが、
将監小屋から水干までは巻き道のルートを選択。
明るいとこんな感じ。
この写真は2年前のものでかなり崩落してますが、
きれいに修復されていました。
デジャブのようなトラバースを繰り返して水干には2時間ほどかかって到着。
ここは多摩川最初の一滴。
この1滴があの大きな大きな多摩川につながっているなんて何回来ても感慨深い。
暗くてぜんぜんよくわからなかったのは残念だけど。
しばらく行くと雁峠。ここの景色、すごく好き。
きれいな円錐の笠取山がすてきなんだな~
やっぱり真っ暗だったからぜんぜんよくわからなかったけど。
おまけにこの辺から雨と霧が激しくなってきた。
登山道はもはや川。
靴を濡らさないように・・・と注意したけど
道は笹藪な上に道は川なので、濡れないように歩くのはほぼ不可能。
途中からあきらめて気にせず歩くことに。
どうせ濡れるならこっちのが断然はやい。
晴れたらこんな感じの気持ちの良いトレイルなんだけどな~
明け方になり、気温もどんどん下がる一方、上がっていく標高。
とにかく寒くて、無心で歩き続けました。
雁坂小屋にはちょうど5時ごろ、到着。
冬かと思うほど極寒でした。
雁坂小屋での葛藤
雁坂小屋の標高は約2000m。
この日の気温は何度だったんだろう。
防寒対策はしっかりしていったものの
手先、足先が濡れているので、止まると体温がどんどん奪われる。
ザックをおろしてしばらくすると、シバリングがはじまった。
寒冷にさらされますと、筋緊張が生じて熱産生が増えます。これをシバリングといいますが、体の震えが起こるのです。シバリングにより熱産生を亢進させて代償しようとしているのですが、ここにも限界がありまして、そういう状態を超えてしまいますと、一気に体温が下がります。低体温症では、寒冷暴露によって熱が放散され体温が失われることと、生体が熱の産生をすることができなくなることが考えられます。
(低体温症 順天堂大学救急・災害医学教授 田中裕 より引用)
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/journal/upload_docs/120656-1-33A.pdf
これ、先日参加した白くま隊のセルフレスキューの講座でならったやつ。
このまま放っておくと低体温症につながる。
小屋の休憩室を使ってもよいということで暖を取る。
濡れた手袋をはずし、とりあえず靴を脱ぎ、ごはんを食べる。
食事をするとエネルギーを使うので、それだけで体温が上がるそう。
休憩室はストーブがたいてあり、徐々に体が温まってきた。
低体温症、回避。
いざというときに身を守れるようにと講座に参加したけど、知識が役立ってよかった。
一瞬、このままのコンディションで本当にゴールまで行けるのか?という気持ちがよぎった。
雨が上がる気配はない。霧も濃い。
なにより、すごく寒い。
レインウェアは新品のゴアテックスだったのでまだ浸水はしていなかったものの
野営するためのツエルトは昨夜の雨ですでにびちょびちょ。
これで2回目の夜を超えられる自信も
この天候で2000m超の稜線を超えていける自信もなかった。
経験したことのないコンディションにさらされ、気持ちに迷いが生じる。
なにより、濡れて寒くて、先に進もうという気持ちが萎える。
「大弛峠でやめる・・・?」
ここは2000mの雁坂峠。
ここでリタイアしたとしても数時間かけて自力で下山しないといけない。
関門までは2時間もあったし、足も残っていたので、とりあえず次のCPまでは進むことに。
なんとしてもゴールに行こうという気力は、このときなくなっていた。
とりあえず、1つ先まで、がんばろう。
雁坂小屋~大弛小屋
止まっているとシバリングが止まらなかったので
ゆっくりでもいいから歩き続けることに。
雁坂小屋から大弛峠まではコースタイムで10時間30分。
雁坂嶺、破風山、甲武信ヶ岳、国師ヶ岳と2500m級の峰々をいくつも超えていく。
(おつかれのよちよちおじさん・・・)
このあたりから相方はすでによちよちおじさんだったので
体を冷やさないように、お互いマイペースに。
残念ながらまったくペースが合わないので置いていかせてもらう。
とにかく動いて体温を下げない作戦は、大成功だった。
寒くてあんなに折れかかってた心も
動いて温まってきたら少しずつ前向きになり、甲武信ヶ岳から徐々にペースアップ!
気持ちのよい奥秩父の森の中を歩いたり走ったり
苦手だったくだりも落ちるように歩く感覚がつかめて、スムーズに進めた。
奥秩父の深い森は、何度来ても本当に美しい。
そんなこんなで大弛小屋には14時15分に到着しました。
ここでやめようかって思ってたけど、関門までまだ3時間以上ある。
ここまでで約90㎞。残りは4分の1。
もともと立ててたタイムテーブルからも遅れていない。
やめる理由がなくなった瞬間。
よし、がんばって最後まで行こう。
大弛小屋~富士見平小屋
大弛小屋からは金峰山を超えて、破線ルートで八丁平を経由して富士見平まで。
カレーを食べて復活して意気揚々とスタートしたわりに
金峰山からのくだりで霧が濃くなり
間違えて金峰山小屋方面に降りてしまった。
大日岩からもはじめてのルートで盛大にロストしてしまい
後続の選手についていかせてもらってなんとか富士見平小屋まで。
行動時間も長くなり、日も落ちてはやく小屋に着きたいという焦りから
集中力が落ちていたのは反省。
22時に富士見平小屋、到着。
長い長い2日目が、ようやく終わりました。
2日目振り返り
2日目の行動時間は23時間。
振り返ってみればかなり長時間の行動となりました。
その割にはペースを崩さず(最後盛大にロストした以外は)進めたのは
水分・塩分・エネルギーをこまめに補給しながら進めたから。
雁坂小屋でいちど心折れたけど、冷静に状況を判断して進み続けられたのもよかったかな。
(ガスでなーんにも見えなかったけど、うれしそうだなぁ)
反省点はただ1つ。
大日岩からヤナギ坂経由で富士見平小屋のルートを試走しておかなかったこと。
破線ルートのわりに道はしっかりしていたけど
大日岩から登山道への入り口がうまく見つけられなくて遭難の危機だった…
不安な道はすべて事前に確認しておくこと。
あきらめない、気持ち
2日目になにより学んだのは、あきらめない気持ち。
朝からずっと雨、かつ濃い霧につつまれていて
それに加えての長時間行動で
寒い、眠い、おなかすいた、雨が強い、霧が濃い、
生理的欲求も安全欲求も満たされない状況だったわけだけど(笑
よくよく考えてみれば時間的には余裕があったし
レインも死んでなかったし(ダウンも持ってたし)
体力的にもまだまだ余裕があった。
つらい、やめたいっていう一時的な感情に流されずに
状況を冷静に判断して進むことができたのは、すごく自信になったなぁ。
(木にひっかかっちゃってレインがざっくり破れたのはショックだったけどね)
いつも会社でよく言われる
結果を変えるには
「できるかできないか」じゃなくて「やるかやらないか」なんだよってやつ。
大自然の猛威にじかに触れて、その偉大さに委縮して
もしかしたら自分にはできないんじゃないかって一瞬不安になったけど
やるんだって決めて、前に進んでよかった。
また1つ、強くなれた気がします。
残すは3日目。
たくさんのことを教えてくれた分水嶺。
ゴールして、どんな景色が見えたのか。
続きます。
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